戸建て住宅の小屋裏 片流れ屋根でも活用できる?
小屋裏収納、屋根裏部屋、ロフト、グルニエなどの言葉がありますが、どれも天井と屋根の間を利用した空間のことです。戸建て住宅ではこの空間を必要に応じて活用することができます。
小屋裏の本来の役割と、活用の可能性について考えてみましょう。
小屋裏、屋根裏とは?
屋根は、屋根の棟と軒の骨組みを作る垂木と、骨組みを覆う野地板で構成されています。この野地板と天井の間の空間を小屋裏、又は屋根裏と呼びます。したがって、この空間の形や広さは、屋根のタイプによって異なります。
屋根裏の空間の広さは、屋根の勾配や屋根の形状によって変わってきます。
急な勾配の三角屋根ほど、縦の空間が広がり、勾配な緩やかな屋根ほど、使える範囲が狭まります。
片流れ屋根の小屋裏は、三角屋根と比較すると、利用しやすい小屋裏です。傾斜がきついほど広い空間ができ、ゆるい傾斜になるほど、使える空間が狭くなるということは三角屋根と同じです。ただし、使えない部分が片側だけなので、使える空間が広がります。さらに、三角屋根より傾斜角度を高くすることができるので、縦の空間もとりやすいという特徴があります。ただ、どんなに小屋裏を最大限広く取りたい場合でも、法律の制約内で、屋根の傾斜を決めなくてはなりません。
小屋裏の役割
本来、小屋裏が持つ働きは、屋根の下にある部屋の温度の上昇を防ぐことと、自然換気をすることです。夏は、太陽の直射熱によって屋根の温度が上昇します。外気温が非常に上がっている時には、屋根に使われている建材や断熱材にもよりますが、部分的には60度を超えることもあるくらいです。
温度が上昇したままになっていると、屋根材の劣化に繋がるとともに、屋根の下の部屋の温度も上昇してしまいます。その暑さを逃がすために、屋根は自然換気ができる構造になっています。
小屋裏を活用する場合の制限
小屋裏の活用方法は、収納スペースとして使う方法と、部屋として使う方法があります。屋根の形や傾斜の度合い、使える高さと面積によって制限が出てくるので、使い方が変わってきます。
小屋裏に対する細かな制限は、自治体によって異なります。
ほとんどの自治体で制限されている項目には
- 屋根裏の面積は、下の階の2分の1以下にする
- 天井の高さは、1,4メートル以内にする
- 小屋裏物置への出入りは上下階からのみ、横からは出入りできない
などがありますが、昇り降りの方法については自治体によって違いがあります。
「小屋裏物置を利用するはしご等については専用のものであること。また、固定階
段を設置する場合は次の各号に該当するものであること。
(ア) 階段は原則として建築基準法施行令第 23 条~第 25 条に適合させること。
(イ) 階段部分は小屋裏物置の①の水平投影面積に算入すること。」
となっている自治体であれば、条件を満たしていれば、固定階段を設置することもできるのです。固定階段が認められていない自治体で家を建てる場合には、梯子などを利用して昇り降りします。
では、固定階段を含めて、小屋裏への昇り降りにはどのような方法があるでしょうか?
天井収納式梯子
折りたたんで小屋裏内に収納できる梯子です。使う時だけ天井に着いている蓋を開けて梯子を下ろします。使わない時には、しまっておくので、下の階のスペースが全く無駄になりません。
ただし、両手いっぱいの荷物を抱えて荷物を上げ下ろしすることはできません。さらに、小屋裏の面積は十分だったとしても、開口部の大きさより大きいものは搬入できません。ほとんどの場合、このタイプの梯子は小屋裏を収納スペースとして使う場合に採用されます。
ロフト梯子
小屋裏と下の部屋の空間がつながっているロフトの場合には、可動式のロフト梯子が使われます。使わない時は壁に垂直につけておき、使うときには斜めにして上り降りします。
ロフトを子供の遊び場や書斎など、部屋として使う場合には問題ありません。しかし、収納として使う場合、収納梯子と違って搬入口の狭さはないものの、収納梯子と同じく、両手いっぱいの荷物を抱えて荷物を上げ下ろしすることはできません。
固定階段
梯子に比べて、安全性や使い勝手がかなり向上します。ただ、小屋裏の下の部屋の面積が約1,5畳分削られてしまという問題点も否めません。
固定式の階段が認められていない自治体では、設置できませんが、認められている自治体に地域で家を建てるのであれば、固定式階段が最も良い昇り降りの方法です。
梯子と小屋裏収納の相性
収納スペースとして使う場合、荷物の出し入れの大変さから、結局使わなくなってしまった、収納したものは収納しっぱなしで、何年も荷物整理をしていないというケースが少なくありません。
確かに小屋裏収納があれば、1年に1回しか使わないクリスマスツリー、来客がめったにない家庭での客用布団、膨大な子供の成長アルバムやDVD類など、日常生活では必要ない品々をしまって、室内をすっきりさせることができます。しかし、大きな荷物を持っての昇り降りは大変です。高齢になった時には使えなくなるかもしれません。
小屋裏を収納スペースとして使うことを検討中であれば、家族構成や、しまいたい物を具体的に考えて、小屋裏収納という収納スペースが暮らしに役立つかどうか判断することが大切です。
梯子とロフトの相性
リビングにロフトを作って子供の遊び場にする、子供部屋にロフトを作って子供のベッドにする、寝室にロフトを作って趣味の部屋にするような場合、子供が小さいうちには注意が必要ですが、本人が昇り降りするだけなので、昇り降りの方法が梯子だったとしてもある程度安全に使えます。
固定階段と小屋裏の相性
固定階段を設置できるとなると、条件は大きく変わってきます。小屋裏の下の部屋の面積は削られますが、安全に荷物の上げ下ろしができるからです。部屋の面積が削られてしまう分、小屋裏に加えて、階段下のスペースも活用できます。また、階段が認められていない自治体であっても、階段のように使える家具を設置して、階段として利用する方法もあります。
昇り降り以外に定められている小屋裏の制限
収納スペースとして使う場合には、昇り降りの方法が問題になりましたが、部屋として使う場合には、どのような制限があるのか確認しておきましょう。
「小屋裏物置に設ける外壁の開口部は、換気上必要最小限の大きさで、外部へ出入
りや、物の出し入れはできないものとすること」
「小屋裏物置の内部には、収納の造作、テレビやインターネット等のジャックの設
置はしないこと」
このような制限がある自治体では、小さな窓しか作れず、最小限の照明しかつけられません。子供の遊び場やベッドにする程度であれば問題ありませんが、部屋として使うことは難しいでしょう。
小屋裏の問題点
暑さと湿度
***収納スペースとして利用する場合
暑さや湿度に弱いもの、暑さや湿度で劣化する物は収納できません。暑さで変質してしまったり、湿度でカビが生えてしまったりこともあります。
***子供部屋にロフトを作って子供のベッドにする場合
夏には、ロフトが家の中で最も暑く、湿度の高い場所になってしまいます。いくら子供が熟睡すると言っても、睡眠の質が低下してしまいます。子供のベッドとして使う予定でロフトを作るのであれば、屋根を高断熱にする、冷房の冷気がロフトにも行き届くよう扇風機を使うなどの工夫が必要です。
活用性を見極めるポイント
小屋裏の利用目的、利用方法に合わせて、活用できるかどうかを判断するにはどうすればよいでしょうか?
天井収納式梯子を使う小屋裏収納の活用性を見極めるポイント
- 収納したい物の中で、梯子の昇り降りと狭い開口部という条件でも出し入れしやすいものの量が多い
- 庭に物置を作る敷地の余裕がない
⇒ 雨の日には庭の物置への物の出し入れができないというデメリットもありますが、もし敷地に余裕があれば、かがまずに出し入れできる庭の物置も選択肢の一つです。 - 玄関やリビングに充分な収納スペースを作るだけの床面積がない
⇒ 小屋裏収納は、梯子であっても出し入れしやすい、めったに使わないという条件の物が、具体的に分かっていて、しかも量が多い場合には活用できると考えられます。
しかし、めったに使わないけれど、梯子では出し入れしにくい、梯子でも出し入れしやすいものはあるが、それほど量はないというような場合には、活躍しない収納スペースになる恐れがあります。
ロフト梯子を使う小屋裏収納の活用性を見極めるポイント
小屋裏への開口部の狭さがない分、多少は出し入れがしやすくなりますが、その他の見極めポイントは天井収納式梯子を使う小屋裏収納とほぼ同じです。
固定階段を使う小屋裏収納の活用性を見極めるポイント
固定階段を設置して、削られた面積に収納できる量より多く収納したいものがある
⇒ 固定階段で削られる部分にファミリークローゼットを作った方が、面積は狭まっても出し入れしやすい場合があります。
下の階と空間がつながっているロフトの活用方法
梯子しか使えなかったとしても、子供の遊び場や、梯子でも楽に出し入れできるものの収納だけを考えている場合には、楽しい空間、便利な空間にすることができます。
季節によっては、ベッドとしても使えますし、造り付けの棚を作っておけば、効率よく収納できます。広さによっては、机を置いて勉強できるスペースも作れるでしょう。ただし、この場合には、子供が安全に昇り降りできる梯子であること、ロフトスペースから転落の危険性がないよう、手すりや格子が設置されていることが基本的な条件です。
建築費用が高くなるのを覚悟の上で小屋裏収納を作ったものの使い勝手が悪く、無駄なスペースになってしまったというようなことにならないよう、ポイントを絞って検討することが大切です。子供たちにとっては楽しいスペースになるに違いないロフトを作る場合には、安全性を最優先に計画しましょう。
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