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新築一戸建てのリビングに吹き抜けを計画したくなる理由
室内の印象にこだわりのある人にとって、内装のデザイン性を高める吹き抜けは魅力的です。高い位置にある窓からの景観が室内を彩る洗練されたリビングが生まれるからです。その他にも、吹き抜けのあるリビングには、たくさんの良さがあります。
室内の環境が向上する
吹き抜けは空間を縦に繋げるので、視界が拡がって開放的な空間が生まれ、高い位置の窓からは陽射しが届き、明るいリビングになります。陽射しが創り出す明るさは、家族の心にも身体にも良い影響を与えます。加えて、晴れた日の昼間は照明をつけなくても日常的な作業はできるので、光熱費の節約もできます。
リビングの窓からの風は、高い位置の窓へと吹き抜けていき、室内の熱を排出すると同時に換気を良くします。換気の良さは、快適さを生むだけではなく、家族の健康にも住宅の寿命にも貢献します。
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参考資料 建築の結露と健康性
家族の自然なコミュニケーションが生まれる
吹き抜けがあると、1階と2階の空間が繋がり、家族の気配を感じ取れる家になります。その結果、自然な触れ合いのチャンスが増え、家族の愛情が育まれます。また、家族がお互いに、外出帰宅を把握しやすいという良さがあります。子どもが成長して、一人で外出するようになっても安心です。吹き抜けにリビング階段を組み合わせると、外出した家族が必ずリビングを通り抜けるので、よりコミュニケーションのチャンスが増えます。
家の中の圧迫感がなくなる
密集した住宅地に狭小住宅を建てるというようなケースでは、狭さから生じる圧迫感で息苦しい家になる恐れがあります。そのような家には、吹き抜けを設けることで視覚的に拡がりを感じる家にすることができます。
■ 吹き抜けの良さには無垢材の美しさを見せるという要素もあります。
コラム 梁を見せる天井の魅力は無垢材の美しさが活きること
玄関に吹き抜けを計画するケース
吹き抜けをリビング以外の場所に設けるケースあります。その中でリビングに次いで人気の高い場所が玄関です。玄関の向きや、敷地周辺の環境によっては袖ガラスのついた玄関ドアを選んでも玄関内が十分明るくならない、または、隣家や通りからの視線があるので、玄関に窓をつけられないというようなことがあります。家全体の床面積を考えると、玄関に使える床面積が少ない為、狭い玄関になる場合もあるでしょう。
このような問題が、玄関に吹き抜けを設けることによって解決できます。玄関は、お客様が初めて目にする場所です。家全体に対する印象が決まる場所とも言えます。狭くて暗い玄関を明るく、縦に拡がる空間のある玄関にすることで、家全体の印象が向上します。
加えて、容積率がオーバーしてしまいそうなときに、吹き抜けを設けることで、床面積を減らすという考え方もあります。容積率とは、敷地面積に対する家全体の床面積を制限する基準です。建ぺい率は敷地面積に対して、一番広い階の床面積を制限する基準ですが、容積率は、2階建てなら1階と2階の床面積を合計して割り出します。この際、基準を超えてしまう場合、床面積に算入されない吹き抜けを設け、床面積を調整することができます。これは、リビングの場合でも同じです。
■ 平屋に吹き抜けとロフトを設けると、プラスαのスペースが得られます。
コラム 小さな平屋でおしゃれに暮らす
吹き抜けのある家が後悔する家になる理由と解決方法
数多くの吹き抜けの魅力に惹かれて吹き抜けを設けた家に暮らす人の中で、後悔している人がいる理由にはどのようなことがあるのでしょうか?
吹き抜けのある家は寒い
このような問題が起こる理由は、住宅の断熱性と気密性が吹き抜けの造る空間に対して、十分な断熱性と気密性を備えていないことと、間取り・空調の考え方の違いです。
住宅の断熱性と気密性
家全体を包む部分からの熱の出入りが、しっかり抑えられている家であれば、吹き抜けがあることによってリビングが寒くなることはありません。
間取りと冷暖房の考え方
間取りと空調の方法には密接な関係があります。居室を細かく区切る間取りと、吹き抜けがあり、家全体の空気が循環するように設計されている間取りでは、適切な冷暖房の方法が変わります。居室を細かく区切る間取りで、上部に欄間などがなくドアを閉じてしまえば、家中の空気が循環しなくなるという間取りの家では、採暖という考え方で部屋を暖めます。家族がいる部屋だけ暖めたり、涼しくしたりするという方法です。
このような間取りの家では、吹き抜けによって冷暖房の効率が落ちてしまい、冬は寒く、夏は暑い家になってしまいます。また、吹き抜けに関わらず、せっかく断熱性と気密性を高めても、その性能が十分に活かされず、家の中に温度差が生まれてしまいます。
一方、近年省エネ住宅に多く採り入れられている間取りは、家中の空気が循環する間取りです。居室を細かく分けない、吹き抜けやスキップフロアを採用する、ドアの上部を開けるなどの方法で、家の中の空気を循環させるという考え方で計画されます。その結果、住宅の断熱性と気密性によって守られている家の中で、暖かさや涼しさがまんべんなく循環する為、吹き抜けがあっても寒い家にはなりません。反対に、吹き抜けの作り出す空間の繋がりが、より冷暖房の効率を向上させるので、住宅の断熱性と気密性が十分に活かされる家が生まれます。
全館空調や床暖房は、優れた性能がありますが、導入費用が嵩んでしまいます。しかし、吹き抜けがあり、家中の空気が循環する間取りであれば、床下エアコンと小屋裏エアコンの組み合わせが採用できます。床下エアコンと小屋裏エアコンはどちらも一般的なエアコンを使う冷暖房の方法なので、全館空調や床暖房のような高額な費用をかけずに設置できます。
暖房用には、床下にエアコンと床にカラリを設置し、暖かい空気を家中に循環させます。冷房用には、小屋裏にエアコンとファンを設置し、涼しい空気を家中に循環させます。この方法は、エアコンメーカーが推奨しているエアコンの使い方ではありません。しかし、導入費用だけではなく、暮らし始めてからの光熱費も抑えられます。
家族のいる場所だけ暖めたり、涼しくしたりするという方法では、エアコンのスイッチを何度もつけたり消したりします。また居室ごとにエアコンを設置しなくてはなりません。一方、家中を暖めたり涼しくしたりするという方法であれば、起床時から就寝時までエアコンはつけっぱなしなので、かえって省エネになるのです。
生活音が響く
2階にリビングの音が響いてしまうので、遅く帰宅した家族がリビングで食事をしていると、2階で寝ている子供が目を覚ましてしまう、リビングにいる時は受験勉強をしている子供に気を使うというようなことが起こります。しかしこの問題は、木造住宅であれば、吹き抜けのあるなしに関わらず起こる問題です。2階の子供部屋の足音が響く、排水音が聞こえるなど、吹き抜けがあってもなくても発生する問題です。家族に音に神経質な人がいる場合には避けた方が良いかもしれません。解決方法としては暮らし方の工夫が考えられます。それぞれの家族で音によって起こりうる問題と、暮らしの工夫でできる対処法について話し合い、吹き抜けを設けるかどうかを決めましょう。
■ 吹き抜けがあると耐震性が低下するのでは…?という不安もあるかもしれません。耐震性能について参考になさってください。
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