無念!市街化調整区域 物語│茨城県つくば市

茨城県つくば市の方から、

「お父様が所有する土地に自分たちの住宅を建てたい」

とのご相談がありました。

 

その土地の用途を調べると市街化調整区域であることがわかり、そこから家を建てるための検討の日々が始まりました。

※この物語は、2020年6月、つくば市の事例です。参考にはなるとは思いますが、建築要件は該当の市町村の最新の情報をお調べください。

※法で決められていることをできるだけ簡略に解説しようとするため、細かな部分が抜けている場合もあります。詳しくは、住宅相談・見学申込フォームからお問合せください。

※建設予定地、お客様の特定を避けるため、町名はイニシャルとさせていただきます。

お父様が所有する建設予定地:つくば市A町

ご相談者が10年以上住んでいた住所:つくば市B町


■市街化調整区域とは

■市街化調整区域に家を建てる

■茨城県で市街化調整区域に家を建てるには「10年特例」

■つくば市のご相談者の場合


■市街化調整区域とは

市街化調整区域は、都市計画法、第七条に詳しく記載されています。

<都市計画法第七条>

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。
ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。

一 次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
イ 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域

二 前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

(引用:都市計画法第七条二より抜粋)

簡単にいうと、

市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域のことで、住宅や施設などを積極的に建設して活性化を行わない地域のことです。

市街化を目的としていないので、人が住むために必要な一般的な住宅や店舗(商業施設など)を建築することは原則として認められていない地域となります。

ちなみに、市街化調整区域に対する「市街化区域」は、

市街化を活性化する地域のことで、住宅街や店舗(商業施設など)がある市街化された区域、または、これらを概ね10年以内で市街化を進める区域となります。

市街化区域であれば、住宅なども通常の手続きをすれば問題なく建築することができます。

 

■市街化調整区域に家を建てる

市街化調整区域は、原則として人が住むための住宅や店舗(商業施設など)は建築できないのですが、絶対に建てることができないということではありません。

市街化調整区域内であっても、地方自治体に申請し建築許可が下りれば、住宅を建てることが可能となります。

都市計画法34条には、開発許可の主な基準が記載されています。

<都市計画法34条による開発許可の主な基準>

・第1号:開発区域に住んでいる人の生活のために必要な施設(店舗・修理業・理美容院・学校など)

・第2号:鉱山資源・観光資源などの施設、第1種特定工作物に関わる施設(遊園地・ホテルなどの施設やゴルフコースなど)

・第3号:特別の自然的条件を必要とする施設

・第4号:農林水産物の処理や貯蔵・加工などに必要な施設

・第5号:特定農山村地域における農林業等活性化施設

・第6号:中小企業の共同化や集団化の事業に使う施設

・第7号:現在ある工場の事業を効率化するために必要な施設  ※原則として既存工場に隣接する土地であること

・第8号:危険物(火薬類)の貯蔵または処理に供する施設

・第9号:道路の円滑な交通を確保するために必要な施設(ドライブインやコンビニ、ガソリンスタンドなど)

・第10号:地区計画または集落地区計画の区域内における開発

・第11号:市街化区域に隣接・近接していて一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域で、環境保全に支障がないと認められるもの (住宅など)

※おおむね40~50棟以上の住宅が一定間隔で集まっていることや、上下水道が整備されている、道路に接しているなどの一定条件が必要

・第12号:条例で区域・目的または予定建築物などの用途を限り定められたもの(線引き前土地所有者の親族の自己用住宅、住宅の増築又は改築など)

・第13号:もともと居住用や業務用を目的としていた土地であり、一定期間内に建築が完了できるもの(自己用の住宅など)

・第14号:市街化区域では困難であり、著しく不適当と認められるもので、開発審査会で許可を得られた施設(農家等の親族の自己用住宅(農家分家住宅など)、寺や納骨堂、ゴルフ練習場、老人ホームなど)

自治体により、条件は異なりますが、市街化調整区域で家を建てることができるのは、第11号~第14号に該当する地域ということになります。

※自己用住宅とは、自分で住むための戸建て住宅のことです。

 

■茨城県で市街化調整区域に家を建てるには「10年特例」

茨城県の県条例第6条第1項3号に「10年特例」として、市街化調整区域に自己用住宅を建てることを許可する際の条件が記載されています。

10年特例の内容を簡単にまとめると、

<土地に対する条件>

家の建設予定地が、既存集落内にあることが条件となります。

既存集落とは、50個以上の建築物が連たんしているものをいいます。

連たんの条件は、建築物と建築物が敷地相互間が70mメートル未満で、50戸以上の住宅が含まれているものとなります。

<人の条件>

1、家の建設予定地または、隣の大字に線引き前から住んでいた。

※線引き日とは、区域区分(くいきくぶん)決定の日のことを言います。 市街化調整区域に関する都市計画が決定され、又は都市計画を変更してその区域が拡張された日のことです。

※各市町村によって異なりますので、個別に確認することになります。

2、家の建設予定地または、隣接する大字に10年以上住んでいる。

3、1の場合、該当するのは、自分、自分の親の親まで、または配偶者となります。

<必要理由>

市街化調整区域に家を建てる場合、結婚して独立した世帯を構成する、退職又は転勤等により転居せざる得ないなど、やむを得ない理由があることが条件となります。

その他、土地面積や、年齢制限などあるのですが、ポイントだけご紹介させていただくことにとどめます。

市街化調整区域に建設可能な条件は、個人の環境により違いますので、住宅相談・見学申込フォームより個別にお問合せください。

また、条件を全て満たしていることが、市街化調整区域に家を建てる許可が下りる条件ではありますが、必ず許可が下りるということではないということは覚えておいてください。

 

■つくば市のご相談者の場合

・過去に住んでいた場所

ご相談者のお父様が所有する住宅の建設予定地(つくば市A町)が市街化調整区域内にあることがわかったので、ご相談者の出身地(つくば市B町)を聞きました。

地図で位置関係を確認すると、つくば市A町とつくば市B町の間にはつくば市C町が存在し、隣接していないことがわかりました。

また、ご相談者の現住所はつくば市内ではあるのですが、市内で何回かお引越しされているので、ご実家(つくば市B町)以外で10年以上住んでいるところはありませんでした。

・飛び地があった!

この時点で、ご相談者が条件を10年特例の条件を満たしていないため、市街化調整区域にあるつくば市A町に家を建てることをあきらめざるをえない状況です。

しかし、もう一度地図を見てると、つくば市A町に接しているつくば市B町の飛び地がありました。

飛び地とは、他の区域内に離れて存在するが、行政上は主地域に属する土地のこと。ポツンと離れて住所がある土地のことです。

飛び地でも、つくば市B町には違いがありません。

これならつくば市B町出身のご相談者が市街化調整区域にあるつくば市A町に家を建てる条件を満たすことができるかもしれないと、淡い期待を持ちつつ、つくば市役所に電話で確認しました。

つくば市役所の回答は、「飛び地が接している場合、つくば市A町とつくば市B町が同じ小学校学区であることが条件」とのこと。

つくば市内の小学校学区を調べてみると、つくば市A町とつくば市B町の小学校学区は違いました…。

 

ここで、手詰まりです。

お父様が所有している土地であれば土地購入費が必要ありませんから、マイホームの購入費を抑えることができますが、市街化調整区域内でご本人が住宅の建築条件を満たしていなければ、家を建てることができません。

結果的に、他の土地を探すことになりました。

 

茨城県の線引き都市計画区域面積合計は305,862ha、に対し、市街化調整区域の面積は253,450ha(82.8%)となります。

(「明日のいばらきを創る-平成29年度茨城土木概要-:区域区分・用途地域一覧」より抜粋)

茨城県の市街化調整区域に家を建てる際は、住宅相談・見学申込フォームよりご相談ください。

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