リビングダイニングとの床面積のバランス
家族の人数が多い、凝った料理を作るのが好き、外食はあまりせず、家族そろって食事をすることが多い、というようなご家族にとって、キッチンはできるだけ広くとりたいスペースです。一方、リビングで過ごすことの多い家族に、人気のあるリビング中心の間取りでは、広々としたリビングが好まれます。
キッチンもダイニングもリビングも、すべて余裕を持った床面積が確保できれば良いのですが、敷地面積には限りがあります。そこで、考えなくてはならないことは、キッチンと、リビングダイニングとの床面積のバランスです。
ご夫婦だけで暮らす家であれば、ダイニングは1.6帖程度で足りますが、4人家族が暮らす家では、およそ2.5帖の広さが必要です。そして、4人家族で、家族がそれぞれ好きなことをして過ごせるリビングには、12帖程度必要です。したがって、LDKに使える面積から、14.5帖を差し引いた面積が、キッチンに使える面積ということになります。
ダイニングの面積を削ってしまうと、椅子を引いて座る、立つという動作がしにくくなってしまいます。リビングの面積を削ってしまうと、家族揃って、ゆったり寛ぐ時間が取れなくなってしまいます。キッチンに充てられる面積に合わせて、使い勝手の良いキッチンを造っていくことが大切です。
床面積に合わせたキッチンレイアウトの選び方
キッチンレイアウトには、Ⅰ型、Ⅱ型の他に、U字型やL字型もありますが、ここでは、多くのご家庭で使われているⅠ型、Ⅱ型、アイランドキッチンについてご紹介します。
壁付Ⅰ型キッチン
壁に向かって、直線状にシンク、作業台、コンロが並んでいるレイアウトです。間口が広く、奥行きが短い形状の部屋であれば、最も床面積を抑えられます。一般的なサイズは、間口180~300センチ、奥行65センチです。メーカーによって異なりますが、一般的な規格サイズの場合、間口のサイズは、180~300センチの間で、15センチ刻みで選べます。キッチンのサイズと通路の幅を併せた面積がキッチンの床面積です。
壁付Ⅰ型キッチンに必要な通路の幅は、1人で作業する場合には、キッチンの80cm~90cm程度ですが、子供がお手伝いをするなど、2人以上で作業をする場合には、100cm~120cm程度必要です。
Ⅱ型キッチン
ダイニング側に向いたシンクと作業台と、壁に向いたコンロと作業台が平行に並んでいるキッチンレイアウトです。アイランドキッチンやペニンシュラキッチンと組み合わせて、広々としたキッチンにもできますが、間口が狭く、奥行きが長い部屋では、最も面積を節約できるタイプです。アイランドキッチンやペニンシュラキッチンと組み合わせると、通路の幅も含めて10帖以上必要ですが、小さいサイズのⅡ型キッチンであれば、通路の幅を含めて3帖程度に収まります。
対面Ⅰ型キッチン
Ⅰ型キッチンを対面にすると、壁付より必要な床面積が増えます。キッチンのサイズと、背面の壁とキッチンの間の通路80~120センチ、背面に収納を設ける場合は、収納の奥行、冷蔵庫も置く場合には、冷蔵庫の奥行、キッチン横の片側の通路の幅80センチを加えて、床面積を算出します。
間口に合わせて、キッチンの幅とキッチン側面の通路の幅のバランスを考えないと、キッチンの作業台が広くなり、作業がしやすくなったが、側面の通路が狭く、家族が通りにくいというような状況になってしまいます。
通路の幅とキッチンのサイズによって、キッチン部分に使う床面積が変わってきますが、最小で、3.5帖程度は必要です。4人家族でゆったり使うためには、4.5帖以上が理想的です。
アイランドキッチン
Ⅰ型キッチンは、片側が壁についていますが、アイランドキッチンは、四方に通路が必要です。加えて、キッチンのサイズもⅠ型より大きいので、キッチンだけで6帖は使います。アイランドキッチンのサイズは幅240~270センチ、奥行き75~100センチです。背面の通路は壁付Ⅰ型キッチンと同じですが、キッチン両側面の通路を併せて160センチです。
ペニンシュラ型キッチン
アイランドキッチンのような雰囲気で片側が壁についています。キッチンのサイズはアイランドキッチンと同じなので、対面Ⅰ型キッチンほどではありませんが、アイランドキッチンよりは片側の通路の幅を節約できます。
壁付Ⅰ型キッチン<Ⅱ型キッチン<対面Ⅰ型キッチン<ペニンシュラキッチン<アイランドキッチンという順に、最低限必要な床面積が増えていきます。家族の人数と、LDKの使い方、 LDK全体の床面積とキッチンの床面積のバランスを考え併せて、キッチンレイアウトを選ぶことが大切です。
使いやすいキッチンにする為に必要なこと
使いやすいキッチンにするためには、システムキッチンの機能性、キッチンの通路の幅の他にも、注意しておきたいポイントがあります。
洗面所、階段との位置関係
朝は、朝食の支度やお弁当作りをしながら、洗濯をしたり、子供を起こしに行ったりすることが多いと思います。その際に、効率よく作業を進めるためには、洗面所、または洗濯室と、ベランダや子供部屋への階段が回遊できるようになっていることが大切です。
勝手口
最近は防犯性を高めるため、勝手口を設けない住宅も少なくありません。しかし、最近は勝手口ドアの機能性が著しく向上しているので、勝手口を設けたことによって、防犯性が低下する心配はありません。それよりも、勝手口があることで、キッチンの使いやすさが向上するメリットの方が大きいです。
食料品を運び込む時も、ゴミ出しをする時も、玄関を通らず、直接出し入れ出来ます。門を入ってから、食料品の買い出しを車でする場合には駐車場、自転車で行く場合には駐輪する場所と、勝手口の動線に配慮したエクステリアを計画しておくと、より便利な勝手口にできます。
キッチンの作業台の高さ
床面積のバランスの為には、幅や奥行きが重要ですが、作業のしやすさの為には、キッチンの高さも大切です。身長の1/2に5センチ加えた高さが、一般的には使いやすいと言われているサイズです。現在使用している作業台の高さがちょうど良ければ、同じサイズにし、使いにくさを感じている場合には、どの程度増減すれば良いか考えるという方法も有効です。
収納
新築でまだきれいなキッチンなのに、不満を感じているという項目の中には、キッチンが片付かないというものが多くあります。収納が十分に備えられていないと、キッチンに物が溢れ、片付かなくなってしまいます。
床面積に余裕がある場合には、勝手口のわきにウォークインパントリーを設けると、買い置きの食料品、調理家電、食器など、キッチンに必要なものがすべて収められます。また、置き型の収納家具より、壁面収納などの造作収納の方が、同じ面積を使う場合には、収納力が上がり、デッドスペースも生まれません。床面積の余裕がない場合には、システムキッチンのオプションで、収納力を高めるという方法もあります。
照明・スイッチ・コンセントの位置
キッチンで意外と盲点になるのがこの3点です。
照明
キッチン全体を明るくする天井のLEDライトです。システムキッチンの照明で手元は十分明るくなるので、おしゃれな雰囲気を重視したいという場合には、ダウンライトや、ペンダントライト、ダクトレールにつけるスポットライトが向いています。
ダイニングテーブルとの位置関係と、食後、リビングで過ごすときに、キッチンの照明をほのかに残す場合には、リビングからの見え方に配慮して照明の種類を選びましょう。
スイッチ
照明のスイッチをつける位置は、リビング、洗面所からの動線上、効率の良い場所で、扉や家具の陰にならない場所に設置します。
コンセント
キッチンで使用する予定の調理家電のうち、冷蔵庫、炊飯器など、常時コンセントに繋いでいく家電のサイズと配置に合わせてコンセントを設置します。ハンドミキサーなど、使用する時だけコンセントを使う家電は、作業しやすい位置に、コンセントを設けます。
おおよその見当で、コンセントやスイッチの位置を決めてしまうと、暮らし始めてから、照明がつけにくい、コンセントの数が足りず、作業効率が落ちる、冷蔵庫の上になるはずだったコンセントが、冷蔵庫の陰になってしまい、埃がとりにくいというような問題が起きてしまいます。
使いやすいキッチンにするために必要な要素はたくさんあります。その要素を満たすためには、家族の暮らし方と家電やダイニングテーブルのサイズなどを具体的にリストアップして、計画を進めていくことが大切です。新しい家では、快適で調理を楽しめるキッチンを実現しましょう。
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