子供の事故を防止する為の対策が備えられている家
子供は年齢が低いほど、家の中で過ごす時間が長いため、家の中での事故を未然に防ぐことが、子育て住宅の重要なポイントの一つです。家の中での子供の事故は、もともと非常に多く発生していますが、去年から今年にかけては、さらに増えています。コロナによって、既に保育園や学校に行っている子供も、家にいる時間が増えているからです。
令和2年6月 16 日~18 日に消費者庁が行ったインターネットアンケートの結果を見ながら、子供の家の中での事故を確認し、子供の事故を防ぐ間取りについて、考えていきましょう。家の中で、14歳以下の子供が、事故には至らなかったものの、けがをしそうになったというヒヤリハットを体験した人は、全体の24パーセントに及びました。
ヒヤリハットや事故を体験した人の中で、最も多かった事例は、落ちる事故・ヒヤリハットで500人の回答者中、219人が経験したと回答しました。落ちる事例が発生した場所は、複数回答でキッチン168件、リビング137件、階段119件です。
階段でのヒヤリハット
0歳女児が、2階から転げ落ちて全身アザだらけになったという事故の他に、踏み外して落ちそうになった、子供を抱っこした母親が足を滑らせて転びそうになったなどのヒヤリハットが起きています。キッチンやリビングは、家の中になくてはならない場所ですが、階段は、平屋にすれば、階段のない暮らしを実現できます。
ただ、敷地の広さと、希望する床面積とのかかわりがあるため、密集した住宅地においては、平屋を選ぶことが難しい場合もあります。そのような場合には、階段下にゲートをつける、手すりをつける、安全な階段の形状にするなどの配慮が必要です。
階段には、踊り場のない直階段と、途中でカーブしている階段があります。途中でカーブしている階段のうち、分割した三角形の踏み板のある回り階段は、踏み外しのリスクの高い階段です。直階段は、踏み外しのリスクは少ないのですが、一気に転落するリスクがあります。最も安全な階段は、床面積をたくさん使ってしまいますが、コの字型でゆったりした踊り場のある階段です。
階段は、子育て中だけではなく、家を建てたご夫婦が高齢になった時にも、暮らしやすさに大きく影響します。床面積を節約することを優先して、階段の形状を選ぶのではなく、安全性と使いやすさを優先するべきではないでしょうか?
キッチンでのヒヤリハット
家の中での事故やヒヤリハットの件数が最も多い場所は、すべての事故を含めて、キッチンとリビングです。キッチンでの事故には、やけど、切る、刺さるなどがあります。やけどは、ケトルのお湯をこぼした、ケトルのケーブルを引っ張って落とした、ステンレス製の鍋の取っ手を触ってしまった、魚焼きグリルを触ってしまったなどの原因で発生しています。切る、刺さるといった事故やヒヤリハットは、包丁を使っている時に子供が急に手を出した、いつの間にか包丁を持っていたなどの原因で発生しています。
これらの事故は、キッチンの入り口にベビーゲートを設ける、子供が手を出せない収納スペースを工夫する、子供がコードを引っかけないような位置に、調理器具用のコンセントをつける、床付近にコンセントつける場合には、マグネット式ですぐに外れるタイプを選ぶなどの配慮が必要です。
リビングでのヒヤリハット
室内用滑り台から落ちて額をぶつけ、救急外来で5針縫合したという事故が発生している他、リビングでのヒヤリハットには落ちる、転ぶ、ぶつかるなどがあります。ソファや椅子から落ちそうになる、窓を開け、身を乗り出して落ちそうになるといったケースです。
子供は、いつ突発的な行動をするか予測できないので、これらのケースを防ぐ為には、大人の目が届きやすく、就学までは常に見守れる間取りが求められます。また、敷居の段差で躓いたり、転倒したりしないよう、段差をなくすことも大切です。
リビングとダイニングキッチンの並べ方、キッチンの形状を工夫して、キッチンでの作業中であっても子供を見守れる間取りにしておくことが大切です。キッチンの作業中、目を離さない為、キッチン内に子供を入れたり、壁付キッチンにして、リビングが視界に入らない状態で作業をしたりするというような状況は、キッチン内での事故を誘発する恐れがあります。
ダイニングとキッチン、リビングを直線上に並べる、対面キッチンにするなどの間取りで、常に子供に目が届く状態にできます。さらに、平屋であれば、常に同じフロアで過ごせるので、より見守りがしやすくなります。
浴室でのヒヤリハット
浴室には、お風呂で寝て溺れそうになった、少し目を離した隙に静かに沈んでいた、浴槽を覗いていたら落ちたというようなヒヤリハットの報告からわかる浴槽の危険と、滑って転んだなど事例からわかる床の危険があります。
浴室に、子供だけで立ち入れないように、洗面所側からの鍵をつける、滑りにくい床材を使う、手すりをつけるなどの対策が必要です。特に、就学前の子供が2人以上いる場合には、一人を浴室に残し、もう一人の着替えを脱衣所でするなど、目が届きにくくなる場合もあります。そのような場合にも、浴室の子供を見守れるような浴室と脱衣室の並べ方が必要です。
厚生労働省の人口動態調査によると、平成 26 年から 30 年までの5年間で家庭における不慮の溺死及び溺水事故は 148 件発生し、浴槽に関するものは 136件あります。0~4歳で最も多く発生していますので、十分な対策と見守りが必要です。
参考資料 消費者庁が行ったインターネットアンケート調査概要及び結果
家事負担を軽減できる家
子供が就学するまでの時期は、子供から目が離せず、家事が思うようにできません。子供を見守りながら家事ができる、家事が効率よくできる間取りが必要です。
キッチン、洗面所、浴室が回遊できる間取り
回遊できる間取りにしておくと、朝食の支度をしながら洗濯をする、夕食の支度をしながら、お風呂掃除をするなど、いくつもの家事を同時に進められます。
洗濯室
洗濯に関わる家事は、洗濯室、または洗面所の造り方で大きく変わります。床面積に、独立した洗濯室を作るほどの余裕がない場合には、洗面所内や、勝手口の土間など、洗濯機から近い位置に、洗濯物を干すスペースを作る方法があります。
洗濯室、または洗面所内に、洗濯機の他に、洗濯物を干すスペースと下着やパジャマを収納するスペースを設けます。洗濯物を取り込んだ後は、そのスペースで、アイロンかけなど、洗濯物の仕上げができます。また衣類やタオルの収納スペースは、子供の入浴準備の為、脱衣室と子供部屋を往復する手間を省きます。
洗濯室、または洗濯物を干すスペースのある洗面所は、洗濯物を干したり、取り込んだりする時間を節約できることに加えて、共働きの場合には、暗くなるまで洗濯物を外に出しておかなくて済むので、防犯にも役立ちます。室内干し用のファンを取り付けておくと、子供の世話に追われて、明るいうちに洗濯物を干し損ねてしまっても、室内干しのニオイをつけずに、洗濯物が乾かせます。
勝手口とパントリー
勝手口のない間取りも増えていますが、勝手口があると、家事の効率化に役立ちます。勝手口の付近にパントリーを設けると、買い出ししてきた食料品をすぐに収納できます。また、忙しいと散らかってしまいやすいキッチン内に、物が溢れないようにできます。
ウォークスルークローゼット
子供が小さいうちは、クローゼットの開け閉めが上手にできません。リビング内、または玄関とリビングの間に、ウォークスルークローゼットがあると、まだ開け閉めが上手にできない子供でも、子供用の低い棚を作ってあげれば、自分でお片付けをする習慣が身に付きます。大人にとっても、両手いっぱいに荷物を抱えていても出入りできるので便利です。家全体を考えた時に、使いやすい場所にある収納は、整理整頓に役立ちます。散らかっている部屋では家事効率が落ち、より家事負担が大きくなりますが、使い勝手の良い収納があれば、楽に室内を整理整頓出来ます。
和室
子供は遊び疲れて急に眠ってしまうことがあります。和室があれば、そんな時に、急いで布団をひかなくても、横にさせることができます。
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